『戦火の馬』マイケル・モーパーゴ

9-4-2014
『戦火の馬』を読む。

第一次大戦のイギリスとドイツが、フランスを戦場にしたあたりが物語の舞台。
白いソックスをきれいに同じ長さにはいたように4本の脚が白い、そして、顔のまんなかに、白いくっきりした十字の形がうかびあがる栗毛の馬ジョーイと、彼を大事に大事に育てたアルバート。

通じ合えるアルバートとのイギリスの田舎の暮らしの平和さ、また、泥とぬかるみと有刺鉄線と砲撃まみれの戦場のようすが、馬のジョーイの視点で語られる。最初は、馬が語り手ということに、違和感を感じたけれど、そのうち、この感じは馬の目線だからこそ伝わってくるんだ、とわかる。

戦場で生き残ったジョーイを、イギリス兵とドイツ兵でとりあうシーンが、この本のなかの一番の名シーン(そのあとの大団円の感動は別として)。馬を介して2人が、国じゃなく、人間単位になる瞬間が描かれているのだ。

そして、ジョーイを軍馬としてとても大切にしたニコルズ大尉の戦死、ジョーイとともに戦火の中を働き続けたかっこいい黒馬トップソーンの死が、とても悲しい。

この夏、ロンドンからこの本を原作にしたミュージカルが来ていて、そこに出てくる等身大の馬のパペットがすばらしくて、動きもすばらしくて、うっとり。子馬時代のジョーイのかわいらしさ、そして、成長したジョーイのたくましさが、パペットで見事に表現されていた。

スティーブン・スピルバーグはこのミュージカルを見て、感動して泣いて、すぐに映画化することにしたという(2011年に映画化されてる)。
媒体によって、原作の切り口や、伝え方や表現は違うものになっているけれど(DVDも見ました)、とにかくね、馬と通じ合えたらすてきだろうな、というしみじみした気持ちになる。