平野甲賀先生のこと

ブックデザイナーの平野甲賀先生の訃報が飛び込んできた。大学院のとき、教室でちょこちょこ描いていたいちごの絵を「これ、ちょっと貸して」とおっしゃって、しばらくしたら「こんなのにしたよ」と、本の表紙に使ってくださってた。原稿料を振り込んでもらうために、初めて銀行に口座を作った。成城学園前の喫茶店で、新潮社の装幀室の方と先生が話すのをおとなしく横で聞いて、「先生の仕事の打ち合わせって雑談いっぱいして楽しそうだなぁ」と思った。ゆったりして、「まあ、大抵のことはどうでもいいことだね」という姿勢がめちゃくちゃかっこよかった。サンタクロースみたいな風貌。わたしは、若くて今以上に至らないことが多かったし、昔のことを思うと、恥ずかしさで叫びたくなることばかりだけど、平野先生の思い出はいつもあったかい。画像は、絵を使っていただいたリルケ全集の中の一冊。「リルケ」が甲賀文字、一目で先生のだとわかる造形。悲しいな。
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